新・古寺巡礼


 
                   法然院

 この心持ちは一体何であろうか。

 ……山の上に、

 下界と切り離されたようになって、

 長閑な村がある。そこに自然と抱き合って、

 優しい小さな塔とお堂とがある。

 心を潤すような愛らしさが、

 すべての物の上に一面に漂っている

 ……桃源の夢想を──それが浄土の幻想と

 結びついてこの山上の地を択ばせ、

 この池のほとりのお堂を建てさせたのかも

 知れない……しかし考えてみると、

 ぼくたちはみな桃源に住んでいたのである。

 すなわちぼくたちはかつて子供であった! 

 これがあの心持ちの秘密ではなかろうか。

  (和辻哲郎、全集第二巻、三四-三五頁)




            大覚寺広沢の池










直示庵










真如堂